秋晴れの青空が広がった10月9日土曜日、金沢市役所第二本庁舎で「KANAZAWA SDGs フェスタ」が開催されました。
テーマは「ソモソモをモソモソと考える」。かちっとした勉強会ではなく、大人も子供も、日本人も外国人も、着物の人も洋服の人も、いろんな人が集まって賑やかに繰り広げられるフェスタ=おまつりです。地元のお店が出店するマーケットのほか、映画上映、パートナーズの企業や団体によるセミナー、SDGsアイデアソンなど、楽しくて、美味しくて、興味がわいて、「そうだよね」「それいいね」という気づきが得られる企画が目白押しでした。
では、当日のレポートをお届けします!
メイン会場となった金沢市役所第二本庁舎は、2020年5月に供用開始した新しい建物です。周囲の豊かな緑を取り込んだ開放的なエントランスホールが、さまざまなお店が集まるマーケットの会場となりました。
会場のしつらえや運営は、すべてにおいてサステナブルを意識しています。たとえば、イベントのチラシは、竹紙にノンVOCインキで「CO2ゼロ印刷」しています。受付テントはバンブーハット、屋外に設置した柵も市内の放置竹林から切り出した竹を使っています。
出店するお店も「自分たちにできることは何か」を考え、それぞれ商品やサービスの内容、売り方に工夫を凝らしています。飲食はすべてテイクアウトで、あらかじめマイバッグやカトラリー、タッパーなどの持参を呼びかけています。使い捨て容器で提供する場合も、竹やバガスなど環境に配慮した素材の容器や、再利用できる瓶などを使用します。イベントの課題となっているプラごみを、なるべく、というより、徹底して出さないようにしています。こうしたことには、お店側の努力と工夫だけでなく、来場者の理解と協力が欠かせません。
会場のまんなかに登場した三角形のテントの中で、音楽家と画家のユニットによるパフォーマンスが始まりました。ピアノの音が会場全体に響きます。
演奏に使用されている「蒔絵ピアノ」は、学校で使わなくなったグランドピアノに蒔絵を施したもので、この場所に常設展示されています。場所を変え、役割を変えて、変わらず大切にされているピアノの音色は、人を優しい気持ちにさせてくれます。ちなみにペインティングされたテントの布は、イベント終了後、切ってミシンで縫って「何か」に変身させて販売されるそうです。
ホールから屋外の芝生の広場へ。ウメ、ケヤキ、イチョウなどの樹木は、庁舎建設時にもともとあったものを活かして配置されました。まわりの緑に溶け込みながらも目を引くのは、放置竹林から切り出した竹を使ったオブジェ。高岡中学校の生徒が、kanazaWAZA研究所や、金沢市森林再生課などと協働で創り上げたものです。いろんな立場の人が手をつないで地域課題の解決に取り組み、すてきな「サスティナアート」が生まれました。
屋外にもたくさんのお店が並んでいます。
2Fは、SDGs達成に向けてさまざまな取り組みをしている「IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ」の情報発信&交流スペースです。会員団体・企業のパネルを展示したり、ブース出展したりして活動をPRしています。地元の企業のほか、金澤町家の宿、シングルマザー団体、女性農家グループ、学生のゴミ拾いサークルなどの情報もあり、「こんな団体があったんだ」「この会社がこんなことしているんだ」などと、来場者が足を止めて新しい発見を楽しんでいました。
SDGsというとエコというイメージが強いですが、SDGsが扱っているのは環境課題だけではありません。「経済」「社会」「環境」の3つの側面で17の目標が設定されています。そのため、パートナーズ会員の活動もさまざま。そして違うからこそ、アイデアや知識を交流させて新しいモノ・コトを生みだすことができます。実際、パートナーズ会員同士が連携した協働プロジェクトも動き始めています。
☆パートナーズ会員やその活動について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
パートナーズ会員が講師となり、SDGsに関連して暮らしに新たな視点を提供するセミナーも行われました。こちらのテーマも「トイレを通じた国際理解とおもてなし」「プラスチックごみ問題」「金融経済教育」「まちづくりや教育に欠かせないワークショップのノウハウ」と、多様性に富んでいます。
LGBT社会運動家で一般社団法人 金沢レインボープライド共同代表を務める松中権(ごん)さんをナビゲーターとして招き、映画『カランコエの花』の上映会も行われました。高校を舞台に、LGBTという課題を「周囲の人々」の視点で描き、国内の映画祭で数々の賞を受賞した話題作です。上映終了後は、来場者の感想や質問に松中さんが応えるかたちでトークセッションが行われ、「性の多様性」「人の多様性」について、会場のみんなが一緒に考える機会となりました。
「ふるさと金沢にも新しい風が吹き始めているのを感じる」と松中さん。金沢では今年7月1日、北陸三県で初めてパートナーシップ宣誓制度がスタートしました。またSDGsフェスタの翌日10月10日には、一般社団法人金沢レインボープライドが主催して、北陸初のLGBTQパレード「金沢プライドパレード2021」が市中心部で行われました。「誰ひとり取り残さない」というSDGsの考え方は、金沢でもさまざまな分野に広がり、浸透しています。
同じ部屋では、金沢西高校の生徒が制作した動画が随時放映されていました。金沢西高校では2019年度からSDGsをテーマにした探究学習を行っており、今回の動画は1年生の時から学びを深めてきた生徒有志が制作したものです。少し先の未来を想像し、ペットボトルが出てくるのではなく、持参したボトルに好きな飲み物を注ぐことができる自販機システム「マイドリ」のある学校生活や、フェアトレードチョコをプレゼントしあうバレンタインデーを紹介するなどもりだくさんな内容で、スマホひとつで撮影から編集まで行ったそうです。
遠い目標を語るのではなく、自分たちの手で変えていける、すぐそこにある未来を見つめているのがすてきですね。
メイン会場から徒歩数分の金沢歌劇座で行われたのが「第2回金沢次世代SDGsアイデアソン」です。現在多くの学校でSDGsや地域活性化に関するプロジェクトが行われていますが、本アイデアソンは、小学生から社会人までの各世代のアイデアを反映し、より魅力的なプロジェクトにしていくとともに、これらの実践のチャンスを学外に広げていくことを目的としたものです。
会場では、小学生から高校生までが発案したプロジェクトに対し、小・中学生、大学生、社会人が8つのチームを結成。各世代のアイデアを反映しながら「商店街の活性化」「学校と社会の垣根をなくす」「コロナ禍の国際交流」「子供視線の金沢オンラインツアー」「動物のいのちを救う活動の輪を広げる」「まちのりと連携したシェア傘システム」「農業の魅力発信」「バスの活性化」というテーマで、それぞれプロジェクトに磨きをかけました。
そして迎えた最終プレゼン。IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズ会員らオーディエンスが見守る中で、全チームが堂々と自分たちの思いやアイデアを発表しました。会場の人々が、共感できる視点に大きくうなずき、ユニークな表現に笑い、新しいアイデアにエールを送る様子が印象的でした。
今回のフェスタは、SDGsということばだけを声高に唱えるのではなく、ものを買ったり、食べたり、人と交流したりする中で、しぜんにSDGsの世界にふれてもらうことを大切にしました。この日会場に足を運んだすべての人が、「こんな暮らしをしてみたい」「私も何かできるかも」というヒントを得たのではないでしょうか。
フェスタは盛況のうちに終了しましたが、慌ただしいふだんの暮らしの中でもすこし立ち止まる時間を持ち、ソモソモをモソモソと考えることを大切にしていきたいものです。
<<「KANAZAWA SDGsフェスタ」開催概要>>
主 催|IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議 金沢市日 時|2021年10月9日(土)10:00~17:00会 場|金沢市役所第二本庁舎、金沢歌劇座来場者|2,445人内 容|(1)金沢SDGs広場(SDGs関連マーケット等)(2)IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ紹介ブース、パートナーズセミナー(3)映画上映会(映画「カランコエの花」等)(4)第2回金沢次世代SDGsアイデアソン
参加者の声|《マーケット出店者》・あらかじめSNSで発信したことでマイバッグや器を持参される方が多く、「袋ありますか?」「お箸ありますか」と聞かれることはほとんどなかった。これからのイベントは「袋やお箸はないのが当たり前」になったらいいなと思う。・量り売りや、買い手が容器を持参するのは、昔は普通にしていたこと。原点を根っこに持ちながら、進化も楽しんでいきたい。・パッケージフリーの感覚がお客様のなかで前提としてあったことに驚いた。きっかけがあれば進んでいくことがあるのだなと実感した。・ゴミを出さないことで作業が減り、荷物が減り、支出も減るのに、笑顔は増えた。・初めてのことで自分も含め戸惑っている人も多かったが、慣れていけばきっと日常になっていくんだろうと思えた。そして、その日常は今の暮らしよりずっと軽やかで無駄がないはず。
《パートナーズ》・学生さんから「なぜこのイベントに参加したのか」「普段意識しているSDGsの項目は何か」などと質問され、自分自身が改めて考える良い機会になった。・パートナー企業同士で情報交換したり、学生と交流したりする場があったことで、参考になることが多かった。・小中高生がSDGsについて真剣に考える場に立ち会えて良かった。
《SDGsアイデアソン》・たくさんの刺激を受けた。この素晴らしいアイデアがどうかたちになっていくのか楽しみ(小学生)。・協力してもらう人の探し方など、さまざまなことを教えてもらい、総合の授業の参考になった。このことを授業で友達と共有したい(小学生)。・いろんな世代で交流する大切さ、楽しさがわかった。今後、学校などでもたくさん意見を発信していきたい(中学生)。・ふだんは学校という狭いコミュニティで生活しているので、多くの人と関わることができていい体験になった(中学生)。・大人と関わることでいろいろな職業を知ることができた。仕事の他にさまざまな活動を行っている方もいて、自分の将来にもつなげられそう(高校生)。・学びがたくさんあって、単純に楽しいというより勉強になった会だった。感銘を受けた他グループのプレゼンの仕方を、自分自身の学校の探究活動で参考にしたい(高校生)。・幅広い年齢層のメンバーでのアイデア出し&プレゼンを初めて経験し、世代間交流の面白さを実感した。身近なところに課題解決に向けて熱い思いと行動力のある人がたくさんいると知り、もっともっと繋がってみんなで動いていけたらいいなと感じた(大学生)。・面白いアイデアを出してくる小学生の積極性とユーモア、主体的な姿勢にたくさんの刺激を得た。大学生として参加する意義、役割などを考えさせられた(大学生)。・いろんな世代の声を生で聞き、それぞれが地域社会問題に取り組んでいる姿勢を見て嬉しく思った(社会人)。