2025.07.22

パートナーズ交流会#23 開催レポート

630日(月)、金沢市役所 第二庁舎にて「パートナーズ交流会#23 ジェンダー問題の『今』を知る。~企業と社会の未来を考える~」を開催しました

本交流会では、日常生活や地域・職場でのジェンダーに関する「違和感」や「無意識の偏り」を見つめ直し、誰もが生きやすい社会の実現に向けて考えを深めました。

当日は、基調講演とグループセッションの2部構成で実施し、ジェンダー課題の本質や組織・地域に根付く慣習とその変革の必要性について、活発な対話が行われました

第一部:基調講演:「フジテレビ問題をきっかけにジェンダーについて考える」

フジテレビ第三者委員会の主任調査担当弁護士を務められました小林美奈様から、社会におけるジェンダー構造の課題について講演をいただきました。

一部をご紹介します。

●気づかぬうちの思い込み――「無意識のバイアス」

「女性だから家事」「男性だから責任者」――。
こうした性別による役割期待や、ふとした言葉に表れるアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)が、家庭・職場・地域での不平等を生み出しています。たとえば、昇進した女性への「部署のお母さんとして頑張ってね」という言葉や、性別で制服が分けられる職場など、日常に潜む“思い込み”を見直す必要があります。

●声をあげられない社会――組織の空気と同調圧力

「ジェンダー平等は女性だけの課題ではない」。
講演では、社会を変えるには、男性や上位役職者など“マジョリティ側”が、自らの立場や無意識の偏りに気づき、行動することが不可欠であると強調されました。例えば、家庭でパートナーに支えられてきた男性職員が、その経験を語り、周囲の価値観に変化を促すような行動は、小さくとも確かな一歩になります。

●すべての人のためのDE&I

ジェンダー課題は「女性のためのもの」ではありません。
講演では、社会全体が生きやすくなるために必要なのが「DE&I」―ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包摂性)の考え方であると紹介されました。
特に「エクイティ=公正性」は、平等(Equality)とは異なり、状況の違いに応じて異なる支援や配慮をすること。一律に同じ制度を適用するのではなく、立場の違いに寄り添った設計が求められます。
そのためには、ジェンダーギャップは社会的損失であると同時に、個人の尊厳・人権、社会的公正の問題であることを認識することが重要となります。

●議論だけでは足りない――トップの本気が社会を変える

話題に挙げる、話し合うだけの時代は終わり、今は「本当にやるのか」が問われています。
講演では、制度を変える本気の姿勢として、以下のような具体的アクションが求められていると語られました:

  • 意思決定層に複数の女性(最低3割)を登用すること
  • 苦情を拾う仕組みや相談窓口の整備
  • ハラスメント・アンコンシャスバイアス研修の実施
  • 長時間労働を前提としない昇進制度への見直し
  • 包摂性を意識した制度づくりと価値観の共有

単に数値目標を掲げるだけでなく、「誰ひとり取り残さない社会」を実現するには、リーダー自身の内省と行動が何より重要であると指摘されました。

グループセッション「身の回りのジェンダーギャップに目を向け、より良い未来を考えよう」

グループセッションの前半では、Code for Noto 代表理事の羽生田文登さんより「データから見る石川県のジェンダー」と題して、石川県の現状を客観的データとともにご紹介いただきました。

ディスカッションパート

話題提供後は、「ジェンダーギャップの事実を集め、理想の社会を考えてみよう」というテーマでディスカッションを行いました。各グループから上がった意見を一部ご紹介します。

◆ 性別による“見えない分担”や無意識の役割意識

「夫は家事を手伝っている感覚が抜けない」「家庭のスケジュール管理やゴミ出しは自然と妻の役割になっている」など、家庭や地域の中で性別によって役割が固定化されている状況が多く語られました。
また、「飲み会で若い女性が上座に座るよう促される」「女性管理職は少なく、議員も“1人だけという場面が多い」など、日常にある当たり前の中に、無意識の偏りが残っていることに気づかされる意見もありました。

◆ 理想は「性別で分けない社会」

「役職や制服などに女性だけ”“男性だけの決まりがない社会」「マイノリティの立場からも意見が言える組織」「町内会や役員に多様な人が自然に関われる状態」など、性別を前提とせず、個人のアイデンティティや多様性を尊重する社会の姿が描かれました。
1人が無理なく頑張るのではなく、複数人で支え合えるように」「家族の形や名前の持ち方にも多様性を」などの声もあがっていました。

◆ ギャップの背景にある“空気”や“慣習”

ギャップが埋まらない理由としては、「昔からの習慣に疑問を持たず続けている」「性別による期待が内面化されている」「役職に就くには地区推薦が必要で、男性中心になりやすい」といった構造的な背景がありそうと指摘されました。
また、「女性自身も役割から逃れられず、娘にも女の子らしさを求めてしまう」「声をあげにくい空気がある」といった声からは、ジェンダー課題の根深さと、だからこそ対話が重要であることが改めて感じられました。

今回は、「ジェンダー問題の“今”を知る」をテーマに開催したパートナーズ交流会。
講演と対話を通して、日常にある“あたりまえ”に疑問を持ち、それを構造的な課題としてとらえる視点の重要性を共有することができました。

IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズでは、今後もこうした対話の機会を大切にしながら、地域や企業、行政の枠を越えて、誰もが生きやすい未来をつくっていくためのパートナーシップを築いていきたいと思います!

pagetotop