2024.11.05

「KANAZAWA SDGsフェスタ」レポート

1月1日の能登半島地震。9月の奥能登豪雨。
2024年は、石川で暮らす人々にとって災害がこれ以上なく“自分ごと”になった年です。
能登半島地震から9か月が経ち開催された第4回の「KANAZAWA SDGs フェスタ」は、SDGsの17の目標の中でも「防災」に焦点を当て、より視野を広げてマーケットやワークショップ、映画上映会などを展開しました。

日常の衣食住を楽しみながら、災害に備える。
能登の復興に思いを寄せ、自分ができることを実践する―。
来場者にさまざまな気づきや学びをもたらしたイベントのもようを、レポートします。

市庁舎をマーケット会場に

SDGsフェスタが開催された10月13日(日)は、三連休のまんなか。
秋晴れの爽やかな一日となりました。
会場となったのは金沢市役所第二本庁舎です。
1Fエントランスホールと芝生広場をつなぎ、地元のお店による恒例のマーケットが開かれました。

マーケットのテーマは、「ゴミを減らす」「量り売り」「循環&CREATIVE REUSE」「お直し」「FROM NOTO」「防災」の6つです。
イベントで出るゴミを減らすために、使い捨てのプラスチック容器は原則使いません。フードやドリンクを購入する際は、マイバッグ、マイボトル、マイタッパーが基本です。
グロサリーや調味料、野菜を量り売りするお店では、売る人と買う人の会話も弾み、プラスαの楽しさがあります。
ゴミを出さない暮らしの必需品、コンポストを販売するお店の前では、多くの人が足を止めていました。

ゴミを出さないだけでなく、モノ自体を長く使ったり、使い手から使い手へ循環させる提案もあります。
CREATIVE REUSEのコーナーでは、そのままでは捨てられてしまう端材や余材にひと工夫。「かわいい」「おしゃれ」など、ワクワクするような新しい価値を持ったプロダクトが販売されています。
家具やジュエリー、日用品のお直しコーナーには、自分の愛用の品を持参する人の姿がありました。

思いとともに、使い継ぐ。FROM NOTO

会場のオープンとともに、多くの人が詰めかけていたのがFROM NOTOのコーナーです。
「被災地の復興のために、何か自分ができることをしたい」
そんな思いを持った人が出会い、語り合う場となっていました。

「つなぐおわんプロジェクト」は、能登半島地震の被災家屋から漆器を譲り受けて販売し、売上を復旧・復興に尽力する支援団体へ寄付するプロジェクトです。
能登の各家庭で祝事などに使われてきた漆器が災害関連ゴミとなってしまっている状況に心をいためた山梨県在住のミュージシャン影山朋子さんと、音楽仲間で中能登町在住の須藤雅彦さんが発起人となり、取り組みを始めたそうです。
この日は七尾市、中能登町で譲り受けた漆器が並びました。

 「瓦バンク」は、能登半島地震で倒壊した家屋の瓦をレスキューし、さまざまなかたちでの再利用を考え実践する取り組みです。
青い海を背景に黒い瓦屋根の家々が連なるのは能登ならではの景観であり、人々の心の拠り所でもあります。
県内有数の瓦の産地である小松で、瓦をモチーフにしたプロダクトを制作する森山茂笑さんと吉澤潤さんのコンビが、自分たちにできることをしたいと活動を始めました。

災害について知る、備える

S: 災害に備えて
D: 誰もが自分ごととして
G: がっちり備蓄して
s : シミュレーションしておこう

これは今回のSDGsフェスタの合言葉です。
未知の災害が多発していることを受け、SDGsでも災害に強いまちづくりがターゲットのひとつになっています。
マーケット会場では、災害時にも使えるキャンプ道具や、備蓄できる無添加食品を販売する防災コーナーが設けられたほか、テントや簡易トイレ、パーテーションなど、金沢市の防災備蓄品が各所で展示・活用されました。

こちらのお店のブースに使われているのは、大型避難所で使用される紙管の間仕切りシステムです。
能登半島地震の発生を受けて開設された金沢市内の避難所で実際に使用されていたものです。

手前の“おうち”は、屋内用インスタントハウス。名古屋工業大学の北川啓介教授が設計・開発したもので、能登半島地震の発災後すぐに10棟が輪島中学校の避難所に届けられました。

芝生広場には、橋本建築造園の設計による組み立て式の小屋「KUMITA hut」も登場。
普段は車に積めるサイズで保管でき、組立時間は大人2人で15分ほどだそう(工具不要)。
災害時に活用できるだけでなく、普段から自分の居場所が持てる楽しさも味わえそうです。

IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズと金沢市からの情報発信

2Fの各会議室には、IMAGINE KANAZAWA 2030 パートナーズと金沢市各課の情報発信&体験スペースが設けられました。
印刷会社のユーアートさんは、余った紙で被災地の応援消費をお願いするオリジナルメモ帳を制作。
100円以上の寄付をされた方に配布していました。

オンデマンド印刷で知られるキンコーズさん+金沢の紙卸会社・中島商店さんのブース。
金沢で回収した古紙を、金沢で新たな紙に再生し、金沢で利用を促進する「おきあがみプロジェクト」を進めています。

フェスタ初めての試みとして金沢市危機管理課による防災講座が開催されました。
小さなお子さんを連れた方の参加も多く、皆さんの防災への関心の高さが見て取れます。

日本はもともと自然災害が多い国ですが、能登半島地震や奥能登豪雨をはじめ、近年はこれまでに経験したことのない災害が増えています。
災害は他人ごとではありません。
まずはハザードマップなどで自分が住む場所の災害リスクを知り、避難のタイミングや避難先、そして非常持ち出し袋に何が必要かなどを考え災害に備えることが大切です。

持続可能な社会のために、
新しい楽しさや心地よさを足し算しよう。
そして自分ごととして災害に備えよう。

そんなメッセージが込められた、今回のSDGsフェスタでした。

<<「KANAZAWA SDGsフェスタ」開催概要>>

主 催|IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議 金沢市
日 時|20241013日(日)10001600
会 場|金沢市役所第二本庁舎
来場者|約2,500
内 容|
1)マーケット
防災、FROM NOTO、お直し、循環&CREATIVE REUSE、量り売り、ゴミを減らす、防災備蓄品の展示・利用
2)シネモンドの出張映画館
東北記録映画三部作 第一部『なみのおと』
3IMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズ企業・団体
□株式会社ユーアート
□株式会社ダンロップタイヤ 北陸カンパニー
大和リース株式会社 金沢支店
特定非営利活動法人ニット
□キンコーズ・ジャパン株式会社+中島商店
NPO法人みんなの畑の会
4)金沢市各課
□金沢市危機管理課
防災講座& 備蓄品展示
□金沢市障害福祉課
手話体験コーナー(協力:金沢市聴力障害者福祉協会)、補助犬(介助犬)コーナー
□金沢市都市計画課
木の文化都市金沢推進事業者による木製品の展示/コウハチロウ工房

出展者の声(一部抜粋)|
・防災用パーテーションなど初めて見るものも多く、被災者がこれらで少しでも守られるとよいなと思いました。
・地球が持続するための活動なので、楽しくセンス良く、良いかたちで継続できれば素敵ですね!
・バッグをお持ちのお客様を多く拝見しました。毎回、来場される方々の意識に感動します。
SDGs、防災については頭の片隅にありつつも日々の生活に追われ…。参加者の取り組みや具体的に自分に不足している備えに触れる機会となりました。関心を寄せ、考え、意見することを続けていきたいです。
・防災については、本当に備えておけば、いざ!という時にとても役立つので、引き続き意識付けが大事だと思います。
SDGsや防災というテーマをご理解の上、来場してくださっているお客様がほとんどだと思うので、出展に対して理解や共感してくださる方が多く、とてもやりやすかったです。
・イベントを通じて普段の買い物の仕方や暮らし方が少しずつ変わっていくのでは、と期待感を持ちました。
・個人商店や個人がそれぞれの立場からできることを実践していることは素晴らしく、これからも続けていくべきだと思います。このイベントは継続が大切だと思います。
・防災をテーマに加えたことで、お客様も出店者も構えずに学べる良い機会になったと思います。

pagetotop