2023.03.27

第3回金沢次世代SDGsアイデアソン(DAY2)レポート

金沢次世代アイデアソンDAY1&DAY2の会場となった金沢未来のまち創造館は、旧野町小学校の校舎を増改築して2021年夏にオープンした地域の活性化拠点施設です。学校らしさを残した館内には、オフィスやコワーキングスペースがあり、起業家やクリエイターが集まる環境です。

春の柔らかな空気を感じる321日(火・祝)、金沢市野町の「金沢未来のまち創造館」で、「第3回金沢次世代SDGsアイデアソン(DAY2)」が開催されました。

金沢次世代SDGsアイデアソンは、小学生から大人まで各世代のアイデアを反映し、SDGsや地域活性化に関する取り組みを地域に広げていくことを目的としたイベントです。
3回目の開催となる今年は、これまで以上に実現可能性を重視。公募で集まった小学生・中学生・高校生・大学生が、企業や団体、行政が提示した「実際に今困っていること」に対し、5つのチームに分かれてプロジェクトを立ち上げました。

【1】『学校でも家でもない、子供たちの第3の居場所を金沢に創ろう、広めよう!』(課題提示:一般社団法人 第3職員室)            
【2】『もっと使える空き家』(by 有限会社 E.N.N.
【3】『全盲の人にも使いやすいタッチパネルを考えよう!』(課題提示:全盲の先生)
【4】LGBTQ+ ~金沢にもっと多様性を~』(課題提示: 一般社団法人 金沢レインボープライド)
【5】『持続可能な地域観光のあり方とは?』(課題提示: 株式会社こみんぐる)

各チームはDAY1DAY22度の全体セッションと、その間の個々の活動を通じ、課題解決のアイデアをかたちにしていきました。
では、DAY2の様子をレポートしていきます。

※『持続可能な地域観光のあり方とは?』プロジェクトのチームは、インフルエンザのためこの日は欠席でした。

各世代が「強み」を持ち寄ってディスカッション

会場はチームに分かれて最終会議の真っ最中。
小学生・中学生・高校生・大学生・大人が集まってひとつのチームを結成しています。
「子どもの意見を採用するの?」「大人は分かってくれるの?」など各世代それぞれ思うところがあるかもしれませんが、小中学生の常識に縛られないアイデアや、高校生、大学生の行動力、大人の現実的な視点をかけあわせると、思いもよらぬ化学反応が起きます。

村山市長も視察に来られました。

いよいよプレゼンテーションの時間です。
後方ではIMAGINE KANAZAWA 2030パートナーズのメンバーがオーディエンスとして見守っています。

【1】『学校でも家でもない、子供たちの第3の居場所を金沢に創ろう、広めよう!』プロジェクト(ユースチーム)

ユースチームはこの3か月間、4月1日 オープン予定の「金沢ユースセンター(仮称)」の構想を練り上げてきました。具体的にはカナダのユースセンターとオンラインで交流して、金沢でのユースセンターのあり方を検討したり、地域活動を行う団体が集まるKANAZAWA YOUTH SUMMITに参加してユースセンター設立を発信したりといった活動を行ってきました。 プレゼンでは、オープン間近の金沢ユースセンターが紹介されました。外観は普通の民家ですが、中はハンモックが吊るされるなどオシャレな雰囲気です。

ユースセンターとは、主に中高生が放課後や休日に集まる「第3の居場所」です。

 《オーディエンスとの質疑応答》
Q:金沢ユースセンターでどんなことをしたい?
「勉強カフェをしたい」
「ゲームの仲間が欲しい」
「中学生なので高校生と交流して高校のことを知りたい」

Q:運営資金はどうする?
「寄付などの支援が欠かせない。イベントなどに参加し、金沢で若者を応援する気運を生み出したい」

Q:「壁」はあった?
「いろんな中高生と大人が集まると、得意を集めて協力できるので順調だった」

【2】『もっと使える空き家』プロジェクト(空き家チーム)

近年、全国で空き家の増加が深刻な問題となっています。もちろん金沢も例外ではありません。
空き家チームでは、空き家の新たな活用法として「チチチ」計画を練り上げてきました。
チチチとは「小さな 地域の チルハウス」の頭文字です。ネーミングセンスに脱帽です!
空き家チームが行った「チチチをどう使いたい?」というアンケート調査では「勉強」「のんびりする」「趣味」「読書」などの意見が得られたそうです。
今後の課題としては、利用者が見込める場所の選定、移住者を呼び込める魅力づくり、企業からの広告収入で運営費するしくみづくり、といったことが挙げられました。

空き家チームは大学生がおらず、小学生・中学生・高校生で議論しプレゼンを行いましたが、堂々たるものでした。

たまたまプレゼンを見ていた、金沢未来のまち創造館のオフィス入居者で、金沢空き家活用研究会代表の中川俊之さんが質疑応答で手を挙げ、コラボを提案してくれました。セレンディピティはアイデアを進化させてくれます。

《オーディエンスとの質疑応答》
Q:ユースセンターと親和性があるのでは。
「一緒にやってきたい。ただユースだけでなく、幅広い年代に来てほしい」

Q:空き家はどうやって見つけ、どう交渉する?
「課題を提示した E.N.N.の小津さんが歩いて空き家を見つけ、交渉もしてくれた。そこは大人の力を借りた」

【3】『全盲の人にも使いやすいタッチパネルを考えよう!』プロジェクト(相席チーム)

相席チームはもともとタッチパネルがテーマでしたが、視覚障害者がひとりで飲食店を訪れ食事を楽しむためには何が必要かという本質的な課題に立ち返り、「ちょこっと相席制度」というしくみを考えました。
視覚障害者にとって、飲食店で食べたいものを自由に選ぶことは難しいことです。点字メニューを用意しているのは一部のチェーン店だけ。最近はタッチパネルの導入で店舗スタッフが減り、サポートが受けにくい状況もあります。「ちょこっと相席制度」はこうした課題を解決すべく、サポートが必要な人とサポートしたい人を店内でマッチングするしくみです。

プレゼンでは「ちょこっと相席制度」の寸劇が披露されました。
視覚に障害のある来店客の要望で、店舗スタッフが店内にサポートを呼びかけ、名乗り出た人と一緒に「何が食べたいですか」「パスタです」「何系のパスタですか」…と注文を決めていくやりとりに、会場から拍手がわきました。

石川県立盲学校で実施したアンケートでは、半数以上がこのしくみを利用したいと答えましたが、安全性の確保の面で不安があるという意見もあったそう。

相席チームでは今後、飲食店を対象にしたアンケート調査を実施するそうです。また「お助けボタン」のような、店舗スタッフを介さずにサポートを呼びかけるしくみも考えています。
オーディエンスからは「ぜひ実現して」「利用者にも店舗にも社会にもプラスがある」といったエールが上がったほか、ツエーゲン金沢の灰田さちさんから、視覚障害者向けのサッカー観戦会について情報が寄せられました。

《オーディエンスとの質疑応答》
Q:現状はどのように注文している?
「スタッフに聞くが、あるものすべて言ってもらうことはできないため、『カレーはありますか?』など自分で選択肢を絞る。自由に選ぶことができたらいいなと思い、みんなに考えてもらった」

【4】『LGBTQ+ ~金沢にもっと多様性を~』プロジェクト(LGBTQ+チーム)

一人ひとりが自分らしく生きることのできる社会を目指すために、学校教育でLGBTQ+についての正しい知識を教えることが重要になっています。
金沢では2月、築100年以上の町家をリノベーションした「金沢にじのま」がオープンしました。LGBTQ+だけでなく、障害がある人など多様なマイノリティの方たちが自由に集える居場所です。
LGBTQ+チームはこのにじのまに集まって意見交換をしたり、座談会を行ったりして、LGBTQ+教育の現状と課題について議論を深めてきました。

今後は大規模なアンケートを実施し、教育委員会に提言を行っていきたいとのこと。

座談会とその後のアンケートを通じて、学校教育でLGBTQ+を取り上げてほしいという当事者と学校の現状のギャップが明らかになったほか、
・早い段階で教えるといじめや魔女狩りが起きるのでは。
・中学校では個別指導、高校からは集団授業で取り扱うべき。
LGBTQ+はどの教科でも扱うことができるが、特に効果的なのは道徳ではないか。
といった意見や知見が得られました。

《オーディエンスとの質疑応答》
Q:保護者への働きかけも必要では。
「大人と子どもが一緒に学べる場があるといい」

メインディッシュは「交流会」

質疑応答が盛り上がって予定オーバーしましたが、続いてオーディエンスを交えた交流会(ブラッシュアップ)がチームごとに行われました。
金沢SDGsアイデアソンを企画・運営する(同)楽しい学校コンサルタントSecondの前田健志さんによれば、実はこのイベントのメインディッシュは、プレゼンではなくこの交流会なのだそうです。
その通りで、各テーブルには「たまたまプレゼンを見て共感した人、ハートに火が付いた人」も複数参加し、熱く盛り上がっています。金沢未来のまち創造館という場所ならではの巻き込み効果です。

交流会を終え、それぞれのチームが話し合った内容を発表しました。

★「ユースセンターの課題や、来てほしい対象者について話し合った。『トイレットペーパーに広告を印刷したらいいのでは』という意見が印象的だった」(ユースチーム)
★「金沢にじのまの『にじのまカフェ』が、「ちょこっと相席制度」を取り入れてくれることになった。メディアに取材に入ってもらい、輪を広げていく」(相席チーム)
★「LGBTQ+は複雑な問題。健康のことなのか、人権のことなのか、価値観のことなのか、本質の論点をしっかり持って話し合うことが大事だと分かった」(LGBTQ+チーム)
★「空き家の活用ではなく、一人暮らしの高齢者の家の一部を貸してもらってはというアイデアが出た」(空き家チーム)

各チームでアイデアの広がり、深まり、つながりが生まれました。
なお、セッションの内容は、イベント終了時にグラフィックレコーディング(グラレコ)で共有されました。

違うテーマで取り組んでいても、共通点があり協力できることは多いもの。グラレコを眺めて議論の全体像を見わたすことで、新しいヒントがみつかるかもしれません。当日の会場にいなかった人、イベントのことを知らなかった人にも、この場のワクワク感や可能性が伝わると嬉しいです。

<<「金沢次世代アイデアソン」開催概要>>
主催|IMAGINE KANAZAWA 2030推進会議
共催|金沢市
企画・運営|(同)楽しい学校コンサルタントSecond
協力|一般社団法人 第3職員室、IMAGINE KANAZAWA2030パートナーズ
DAY1
日時|2022年12月17日(土)10:00~17:00
会場|金沢学生のまち市民交流館
DAY2
日時|2023年3月21日(火・祝)13:00~17:00
会場|金沢未来のまち創造館

pagetotop