2022.03.01

会員インタビューvol.16 株式会社DREAM WORKS

すべての子どもに、
学ぶ機会を提供する。
パソコンのリユースから生まれる、
新しい価値。

パソコンの修理・サポートを行う株式会社DREAM WORKS代表取締役の忠田浩兵さん。ハード・ソフトを問わず、年間の500件以上の修理や問い合わせに対応している。独学で学び、実践で磨いた技術がパソコンリユース事業に活かされている。

DREAM WORKSの忠田浩兵さんは、県内の児童福祉施設やフリースクールなどに中古パソコンを寄贈する活動を継続して行っています。本業はパソコンの修理業。修理の技術と経験値を活かしてパソコンリユース事業をスタートし、そこから一歩踏み出して、子どもたちの学習環境の格差をなくすための活動に取り組むようになりました。

子どもたちがパソコンにふれる機会が増えています。その一方で、家庭にパソコンがあるかないか、インターネットにアクセスできるかできないかといった環境の違いが、教育格差を生むとして問題視されています。
家庭の経済的事情や生活事情に関わらず、あらゆる子どもたちにパソコンを使って知識を広げ、世界を広げてほしい。忠田さんはそう願っています。

―まずはDREAM WORKSさんの事業について教えてください。

金沢市湊で「石川パソコン修理センター 金沢店」の看板を掲げ、パソコンの修理・サポート業を営んでいます。
使わなくなった中古パソコンを回収し、修理して販売するパソコンリユース事業も行っています。パソコンはOSやモデルチェンジに合わせて 56年で新しいものに買い替えることが一般的ですが、修理すればまだ十分使えることが多いんです。そこにわざわざコストをかけて処分するのはもったいないですし、環境負荷も生じます。ということで、ハードディスクや部品を交換し、次の人がストレスなく使えるような状態にして販売しています。
これまでさまざまなパソコンのトラブルを解決してきたので、パソコンが壊れる原因はだいたい分かります。中古パソコンはまちのリサイクルショップなどでも見かけると思いますが、ただ使えるだけじゃなく、快適に使えるようメンテナンスして販売するというスタイルは、県内では珍しいんです。

ショップに並ぶ中古パソコン。目的に合わせて機能やスペックを選べば、最新機種でなくても快適に動作させることができる。

―児童福祉施設などへの中古パソコンの寄贈は、どのようなかたちで行っているのですか。

「中古パソコンを10台販売するごとに1台寄贈」というカウントで、4年前から毎年、県内の児童福祉施設やフリースクールなどに寄贈しています。昨年は約10台を寄贈できました。
寄贈先は知人に紹介してもらったり、こちらから「こんな取り組みをしているのですが、パソコンは必要ありませんか?」と手紙を書いたりして探しています。届けた先の子どもたちから「パソコンで動画を見ながらみんなでダンスの練習ができた」などと感謝の声が寄せられると、役に立てたかなと思います。

―専門的なスキルを活かしたプロボノ活動であり、「誰かの役に立ちたい」という人々の気持ちの受け皿になるビジネスモデルでもある、すてきな取り組みですね。

私は父が設計事務所を営んでいたことから、パソコンが身近にある環境で育ちました。知りたいこと、分からないことがあるとインターネットで調べるなど、パソコンを通じていろんな知識を得ることができました。今の時代、パソコンは教育ツールとして浸透しています。小学校、中学校ではプログラミング教育が必修化されていますし、インターネットを使った調べ学習の宿題も出ます。国のGIGAスクール構想に伴い、金沢市でも小学校1年生から中学校3年生の児童生徒にタブレット端末が1人1台整備されていますが、それでも家庭で自由に使えるパソコンがないことで学習機会の格差が生まれています。当社は「GIGAスクールサポーター」として市内の小中学校を訪れる機会も多いので、いろんな問題を実際に見聞きします。
幅広く学び、その先のキャリアに活かしていく上で、パソコンには大きな可能性があります。自分が子どもの頃からパソコンに親しんできただけに、置かれた環境や境遇に関係なく、すべての子どもたちがパソコンにふれ、自分の未来をつくっていける世の中であってほしいという思いがあります。

ホームページ制作についても独学で学んだという忠田さん。毎日更新しているブログでは、修理の現場で得た貴重な知識やノウハウを惜しみなく公開している。

―忠田さんは2017年に起業されたということですが、その経緯を教えてください。また当初からSDGsを意識していたのですか。

もともとソフトウエアの販売・サポートを行う会社に勤めていたのですが、パソコンが壊れて困っているお客様がいると修理してあげていたんです。修理の技術は独学で身につけたものなので、単純に親切心からだったのですが、これを仕事できるのではないかと考え、2017年に企業に在籍しながらDREAM WORKSを立ち上げました。その後、修理の問い合わせが増えてきたことから、2020年に一本立ちしました。
SDGsについては創業時から意識していました。これからはどんなビジネスをするにしろ、欠かせない視点だと思っています。事業を通じて社会課題を解決するのがSDGsの基本的な考え方ですが、そういう意味ではパソコンの修理やリユース事業も12: つくる責任、つかう責任」に関わり、社会課題を解決するものです。でもそれだけでは届かないところがあります。じゃあほかに自分に何ができるか考えたときに、このパソコンを必要としている子どもたちのところに届けたら、「4:質の高い教育をみんなに」にも貢献できるじゃないか、と思い至りました。
売上アップなど本業への見返りを求めてやっているわけではありません。見返りがあるとしたら、今の子どもたちが10年後に、「あのときパソコンを使える環境があったから…」と言ってくれることですかね。

金沢市立の小中学校の「GIGAスクールサポーター」も務める忠田さんは、インターネットを利用できる環境にない家庭に対するサポートの必要性も感じている。

―日本では7 人に1人の子どもが相対的貧困の状況にあり、周囲にとっては「あたりまえ」の教育や体験の機会に乏しく、 進学や就職などさまざまな面で不利を背負うと言われています。パソコンを使った学習機会を確保することで、少しでも不利の解消につながるといいですね。今後の展開について教えてください。

寄贈の取り組みについては、私ひとりの力では限界があります。福井県の企業がこの取り組み賛同してくれて、一緒に輪を広げていく計画ですし、共感していただいたIMAGINE KANAZAWA2030パートナーズの会員企業さんからは、中古パソコンを回収させてもらいました。将来的にはより多くの人を巻き込んでNPOを立ち上げたいと思っています。また、ただモノを届けるだけでなく、活用できる環境づくりをサポートしていきたいですね。

「介護施設にパソコンを寄贈し、コロナ禍のZoom面会に活用してもらえるような使い方も提案できれば」とのアイデアも。
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