―地域の文化や風土に根ざした「食」のちからを感じます。平成21年には自社農場「しじまやファーム」を立ち上げて、かぶを栽培されています。農業から始めて発酵食品作りをされているんですね。
《四十万谷専務》自社農園の立ち上げに際しては、原材料の安定確保というねらいのほか、より良い商品づくりをする上で栽培の苦労を理解し、地域の農家のみなさんと一緒に発展していきたいという当社代表の思いがありました。農家の方々に「よいかぶを作ってください」とお願いするだけでなく、自分たちもその苦労を分かったうえで、一緒にいいものを作っていきたいと考えたようです。
《山中工場長》かぶら寿しは、水 、米、かぶ、ぶりと、山から海に至るあらゆる自然の恵みがあって初めてできあがることが特徴です。自然のものが原料なので、異常気象など環境変化の影響を受けやすいんです。例えば、気候が変わると農作物の収量や生育状態が変わってきます。実際、当社の漬物商品の中でも、原材料が手に入らなくなり生産をやめたものもあります。また海のものでも、イカやニシン、カズノコなど、今後入手が困難になりそうなものがあり、大きな課題になっています。
《四十万谷専務》農業に関しては、小さなスケールですが循環型の農業に取り組み、金沢SDGsの(2)“もったいない”がないまち~環境への負荷を少なくし資源循環型社会をつくる~ に繋がっているのではないかと思います。かぶら寿しというものは贅沢な食べ物で、丸いかぶの真ん中の部分しか使いません。また、割れたり、すが入ったりしたものも商品にはできません。もったいないですし、廃棄の費用もかさんでいました。そこで工場長が中心となってさまざまな方法を検討し、機械を導入して野菜くずを粉砕、乾燥させて肥料として畑に戻すことを始めました。これにより、廃棄コストも大きく下がりましたし、自然に優しいものづくりの体制に近づきました。