2021.08.14

会員インタビューvol.10 Finding ゴミ

ゴミを拾うことは、人と人をつなぐこと
地域を動かすちからを育むこと

「ゴミ拾いを楽しもう!」「オー!」の掛け声でゴミ拾いがスタート。

梅雨の晴れ間の日曜日。金沢大学角間キャンパスにほど近いもりの里エリアで「ゴミ拾い大会」が行われました。チームごとに拾ったゴミの重さを競い合う企画とあって、黙々とゴミを拾うというわけではなく、賑やかでゆる~い雰囲気。
主催は「Findingゴミ」。20207月、同大学地域創造学類の学生が立ち上げた団体で、その名の通り市内各所でゴミ拾いイベントを実施しています。でも、本当に見つけたいのは、ゴミではなかったりします。人と人との出会いや交流、そこで生まれるアイデアや視点。地域を動かすちからが、ゴミ拾いを通じて育まれています。そう、ゴミ探しは、コミュニティ活性化につながる宝探しになるのです。
イベント終了後、代表の岡さんをはじめ、メンバーの内田さん、水野さん、西嶋さんの4名に話をうかがいました。

―今日のゴミ拾いイベントには40名近くの方が参加されていましたね。

《岡さん》これまでは知り合いを誘って、ということが多かったのですが、今回は1年生から院生までさまざまな学類の学生、それから先生も参加してくれました。団体の立ち上げから1年余り経ち、少しずつ知名度も上がってきました。これだけの人数が蛍光色のビブスを着けて歩いていると目立ちますし、それだけでポイ捨て禁止や清掃活動への参加の啓発になると思います。
今日みんなで拾ったゴミの総重量は30キロ。何気なく歩いていると気づきませんが、探してみるとあちこちにいろんなゴミがあって、風景が変わって見えると思います。

制限時間は75分。ゴミが多く捨てられていそうな場所をねらうなど戦略的にゴミを拾うチームも。

Findingゴミは「地域コミュニティの活性化」という目的を掲げて、今日のように市内各所でゴミ拾いを行っています。設立の経緯を教えてください。

《岡さん》さかのぼると、僕自身が高校時代から近所のゴミ拾いをしていたということがあります。3年生の受験シーズンになり、いよいよ試験本番の日、答案用紙に向かう僕に代わって、先に受験を終えた友人がゴミ拾いをしてくれたんです。僕にエールを送るつもりだったのかどうなのか、そういうことは聞きませんでしたが、ゴミを拾うという自分の活動を通じて、他の人の考えや行動を変化させることができるんだ、と気づきました。大学ではそうしたことをひとりでやるんじゃなくチームで行うことで、より多くの人を巻き込んでいきたいと思い、内田君と水野君に声をかけたんです。

《内田さん》僕は地域教育に興味があり、今も地元の小中学生と一緒に地域のことを取り上げた雑誌をつくる活動を行っているので、「地域コミュニティの活性化」という目標に自然に共感できました。

《水野さん》僕は岡君や内田君と違って意識が高いタイプではないので…。ちょうどコロナで授業もオンラインばかりになり、人と会って、体を動かしてやる活動がしたかったというのが、参加した正直な理由です。まず3人でイベントを行って、その後に西嶋さんが参加してくれました。

《西嶋さん》私はゴミや環境問題というよりイベント運営に興味があったんです。グループLINEでメンバー募集の情報が流れてきたときに、これは面白そうだなと思って参加を決めました。

左から、水野晃佑さん(静岡県出身)、西嶋陽香さん(石川県出身)、岡章太郎さん(滋賀県出身)、内田陽仁さん(静岡県出身)。

―イベントとしてのゴミ拾いということですが、どんなかたちで行っているのですか?

《西嶋さん》単にゴミを拾うのではなく、「ゴミ拾い×多言語交流」「ゴミ拾い×観光」というように、何か別の要素と組み合わせています。そうするとマイナスのイメージを持たれがちなゴミ拾いに、宝さがしのような楽しさが生まれます。たとえばゴミ拾いとまち歩きを組み合わせたときは、参加者から「金沢にこんなところがあったんだ」という感想が聞こえてきて、嬉しかったですね。

《水野さん》この活動を始める前は、ゴミ拾いというと「きつい」「大変」というイメージがあったんですけど、今回のようにチーム対抗で拾ったゴミの量を競い合うというようなゲーム性を持たせると、意外とみんな楽しめるんですよね。

《岡さん》そういう感じで、学生ならではのゆるい雰囲気でやっているんです(笑)。

この日は地域創造学類長の佐川哲也教授もイベントに参加。「チーム佐川」は、側溝や植栽に隠すように捨てられている缶や瓶を次々と探し当て、計9.95キロのゴミを拾って優勝!

―自分の変化や成長だったり、あるいは周囲の反響だったり、どのようなところで活動の手ごたえを感じていますか。

《岡さん》僕たちの活動に興味をもってくれた企業の方から連絡をもらい、イベントのお手伝いをしたり、寄付のかたちで支援をいただいたこともあります。あとは、実際にゴミ拾いをしたときに、住民の方に「ありがとう!」「ここは私がやっとくから」と言ってもらったりして、何気ない交流ができるのも楽しいです。想像以上に見てくれている人がいることが、活動を続けるモチベーションになっています。

《内田さん》キャンパスでは経験できないことが経験できる点ですね。イベント企画運営のノウハウについて実践的に学べるので、将来、地域と関わりながら仕事をする上で活かせることもと多いと思います。

浅野川の河川敷にて。イベントに参加した学生に理由を聞くと、「なんとなく面白そうだったから」「自分自身が何かプロジェクトを立ち上げる際のヒントをもらいたかったから」という答えが返ってきた。

―これまでみなさんの話をうかがってきて、不思議なことに「まちをきれいに」というような意見はあまり出てきませんね。

《岡さん》ゴミを拾って地域をきれいにすることはもちろん大切なことです。でも僕たちは、どれだけ多くのゴミを拾うかを追求しているのではなく、ゴミ拾いをきっかけにどんな新しいつながりが生まれたかということのほうを重視しています。それってSDGs17:パートナーシップで目標を達成しよう」そのものだと思いますし、街の活性化につながるような大きな渦を起こすきっかけになります。そんな意味で、地域の方や企業、あるいは他大学の学生とも連携できればと思っています。

今年、団体メンバーになった新1年生は、「イベントに参加して落ちているゴミの量に驚き、運営側に加わることを決めた」「授業で海洋プラ汚染の深刻さを知り、自分にできることをしたいと思った」「ゴミを拾うだけでなく、自己成長につながる経験をしたい」などそれぞれの思いを持ち寄っている。

―個人として、あるいは団体として、今後やっていきたいことを教えてください。

《西嶋さん》メンバーが増えた今も地元石川出身者は私だけなので、ローカルな視点を活かしていきたいです。

《内田さん》ゴミ拾いを通じて子どもたちが地元の良さを再発見し、地元を好きになってもらうきっかけづくりができたらと思います。

《水野さん》僕自身は、こういうことをしたいという明確なものは今はないけれど、Findingゴミという場が、メンバー各自がやりたいことが実践できる場になればいいなと思っています。

《岡さん》僕たちが掲げる目標は「地域コミュニティの活性化」という漠然としたものです。それには理由があって、メンバーの多様な興味や志向を受け止められる場にしたいんです。団体の方針と個人の思いの齟齬が生まれてはもったいない。水野君が言うように、メンバーがそれぞれのやりたいことを実現できる柔軟な組織であり続けたいです。

Findingゴミは現在、2年生、1年生合わせて10名体制。1~2か月に1回程度の頻度でゴミ拾いイベントを企画運営している。
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