2021.03.31

SDGsカフェ#16 開催レポート

今回のSDGsカフェのテーマは「ダイバーシティ経営」。
「『あうわ』視覚障害者の働くを考える会」の代表で、自らも弱視(ロービジョン)の当事者である林由美子さんをIMAGINEする人に、「あらゆる人に働く希望を、心豊かなStoryを」をコンセプトに多様な人の就労や学習を支援するヴィスト株式会社の奥山純一さんをアイデアをくれる人にお迎えし、「誰にとっても働きやすい環境」ってどんなだろう?という問いをみなさんと一緒に考えました。

左:奥山さん、中央:林さん、右:永井事務局長(UNU-IAS OUIK)

みなさんと考えるきっかけとなる話題提供を、まずは林さんから。
林さんは、14年前からものが見えにくくなり、約20年間勤められたIT企業のSEのしごとを休職。その後、石川県立盲学校に通い、はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を取得され、2012年に「レディース鍼灸院 織歩(おり〜ぶ)」を開業されました。
これまでの経緯をお話しされた後、林さんはご自身の事例を「『中途視覚障害者が盲学校理療科に進み、仕事に結びついた大成功の事例』である一方、『視覚障害者の職域でもあるIT企業を辞めざるを得なかったものすごく残念な事例』でもあります」とお話しされます。

林さん スライド1
見えにくくなってからこれまでの林さんの歩みをお話しいただきました
林さん スライド2
林さんはご自身の事例を「大成功の事例と残念な事例の両方に当てはまります」と紹介されます

視覚障害者は他の障害のある方より就職率が低く、さらに働く人の3割が理療(鍼灸マッサージ)に従事されているそう。石川県では、職業訓練を受ける環境が整っていないために働くことができる職域は特に限られているようですが、全国的に見ると、企業のヘルスキーパーや学校の先生、公務員、音楽家、そしてIT分野で活躍している方もおられます。
林さんは視覚障害者がこのような職域で活躍されていることを、理療の勉強を始められてから知ったそうで、「ITの会社を辞めなくても良かったのか、と愕然としました。この時の残念に思った気持ちが、『あうわ』の活動の原動力になっています。」と、視覚障害者の就労の課題と『あうわ』の活動に取り組む思いを語ってくださいました。

視覚障害者の就労には様々な課題があることが分かります

続いて、奥山さんからは起業の経緯や自社の取組を教えていただきました。事業をスタートした時は、働くことに障害を感じる人の就労支援が中心でしたが、寄せられる相談の声に応えるため、発達に障害のある未就学児や小中学生、高校生のキャリア教育などへの事業を拡大、そして、富山、神奈川と活動範囲も拡大され、今に至るそうです。
お仕事をする中で奥山さんは、障害って何だろう?公平な支援ってどんなだろう?ということを考えることが障害のある人が活躍できる環境をつくるために大事と感じていること、福祉、教育、医療の分野の連携がうまくいっていないという課題が見えてきたこともお話しくださいました。

奥山さん スライド4
ヴィスト株式会社では主に4つの事業に取り組まれています
奥山さん スライド5
”平等な支援”ではなく、それぞれが目的を達成することができるように”公平な支援”をする必要があります、と奥山さんは話します

お二人の話をお聞きし、参加者や登壇者からは、視覚障害者の職域って地域格差があるってこと?福祉、医療、教育が連携するには、どこがコーディネーションすると良い?新型コロナウイルス感染症の影響はある?など、気になる質問がたくさん。
「ICTがぐんと進んでいるので、これから在宅支援の可能性が広がって、地域格差は埋まっていくことが期待されます。」「コーディネーションは、1つの企業ではできることも限られている。もっとゆるい、抽象度を1つ上げた有志のあつまりがあるといいなと感じます。」など、林さんと奥山さんも質問に1つ1つ丁寧にこたえてくださいました。

まずは「知る」ことが大事ということを、お二人とも話題提供の中で触れられていました。
まさに今回のカフェは、林さんや奥山さんの経験から、視覚障害をはじめ、働くことに障害がある人の就労について「知る」とても良い機会となったのではないかと思います。
レポートや動画を見て、あなたも知ることから始めてみませんか?

◆全編動画もご覧ください
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